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高市新首相の外交デビューを冷静に分析する


2025年11月
富坂 聡
 高市早苗首相の本格的な外交デビューとなったマレーシアのASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議、日米首脳会談、そして韓国・慶州で開催されたAPEC首脳会議が終わり、新首相に対する評価がメディアやネットにあふれています。
 国際会議の場では多くの参加国の首脳と会談もこなしましたが、注目は何といっても日米首脳会談と日中首脳会談です。
 日米首脳会談では、そのはしゃぎっぷりや「上目遣いで、情けない…」との批判も聞こえてきましたが、本質の議論ではありません。
 そもそも「中国を睨んで」日米同盟の強化を謳い、アメリカの理不尽な要求にも満額に近い回答を用意し臨んだのですからドナルド・トランプ大統領が上機嫌なのは当然です。「良い関係が築けた」と評するのは的外れ。しかも共同声明も出ていません。
 韓国は対米投資の方法をめぐり一括か現金かの交渉で粘り、原子力潜水艦の自国建造にも道筋をつけたのです。見劣りは否めません。
 肝心の日中首脳会談も散々でした。高市首相だけでなくメディアも含めた評価です。
報道では「率直に言った」ことが取り上げられました。尖閣や日本人拘束から香港や新疆ウイグル問題について、だというのです。
 尖閣や日本人拘束と香港とウイグル問題が並列で扱われている時点で落第です。
 そもそも「率直に言う」ことなど簡単です。後の影響さえ気にしなければ良いだけです。もし中国が今後日本との首脳会談を拒み続けたらどうでしょう。問題は何も解決しません。
 例えばレアアースです。アメリカでさえ慌てた問題でEUはシェフチョビッチ委員が焦って中国と連絡を取り「EUの企業には優先的に許可を出す」との約束を取り付けました。
 日本はどうするのでしょう。世界最大の市場で欧米と競争する日本企業は、大きなハンディキャップを背負うでしょう。これが成長戦略を模索する国のすることでしょうか。
 帰国後には台湾海峡を引き合いに中国を名指しで「存立危機事態」にも触れました。
中国の報道官は、こう問いかけます。
「日本の指導者は『台湾独立』勢力にいったいどんなシグナルを送りたいのか?中国の核心的利益に挑戦し、中国の統一という大業を妨害したいのか?中日関係をいったいどこへ導こうとしているのか?」
 本当に理解できないのでしょう。
ここ数年、東南アジアでの日本の好感度は下がる一方です。それもむべなるかな、です。