グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

検索

TOP >  コラム >  中国外交の失敗を象徴した香山フォーラム

中国外交の失敗を象徴した香山フォーラム


2025年9月
門間 理良
 中国の恒例行事となった香山フォーラムが2025年9月17日から19日まで北京で開催されました。12回目となる今年のフォーラムのテーマは「共に国際秩序を守り、共に平和発展を促進させる」です。参加した国・地域・国際機関は100余り、登録人数は各国の国防機関・軍隊・教育機関・シンクタンク、民間ジャーナリスト等1800人余りと主催者側は発表しました。

 2025年は「抗日戦争勝利80周年」「世界反ファシズム戦争勝利80周年」の年でもあったために、香山フォーラムでも歴史を意識するシーンが随所に見られました。18日に基調演説を行った董軍国防部長は2つの80周年を挙げつつ、「我々は正しい第二次世界大戦史観を堅持し、歴史の正義を断固として守り、最も広範な共通認識を形成する必要がある。中国軍は各国と共に、主権平等を守り、戦後秩序を守り、多国間主義を支え、共通利益を守り、グローバル・ガバナンス体制の改革・整備を共に後押ししていくことを望んでいる」と表明しました。9月18日と言えば、中国国民ならすぐに1931年に発生した柳条湖事件(遼寧省瀋陽で日本軍が南満州鉄道の線路を爆破した事件)を思い出します。その日に国防部長の基調演説を行ったことも、中国側の意図を感じざるを得ません。

 また、董軍国防部長は「世界は百年に一度の変革期を迎えたが、冷戦的思考、覇権主義、保護主義の暗雲は消えていない」とも指摘しました。これは、暗に米国を批判したと報じられています。日本に対しては歴史問題を前面に押し出して優位を確保しようとし、米国に対しては、バイデン政権まで米国が唱えていた政策を、いまや中国が唱えてトランプ政権に対抗しています。

 このような中国の主張の受け皿となっているのがグローバルサウスです。中国経済の減速趨勢は覆りませんが、巨大な経済力を依然保持し、科学技術力の著しい向上があることは我々も正面から認識すべきです。それをグローバルサウスは当てにもしています。また、権威主義的な中国の政治体制は、それに類似する国が多いグローバルサウスに連なる諸国にとって、親和性が高く魅力のある存在に映っていますが、民主主義国家からは受入れられるものではありません。

 9月3日に行われた軍事パレードにせよ香山フォーラムにせよ、大統領や大臣レベルを派遣する民主主義国家はありませんでした。そこに改革・開放政策を実行してきた中国の外交的失敗が透けて見えるように思われます。また、歴史的事実を改変することにも中国は躊躇しません。「歴史を鑑にする」ことを再三日本に求める中国ですが、それがブーメランである自覚はないのでしょう。