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キャンパスが消える日


2020年6月
丹羽文生


新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための一環として、全国の大学でオンラインによる遠隔授業が始まりました。オンラインによる遠隔授業では、zoomやMicrosoft Teams、Webex、あるいは、以前より多くの大学で活用されてきた学習管理システムBlackboardといったコミュニケーションツールを利用します。拓殖大学も5月末にスタートしました。最初は何もかもが初めてのことで些か戸惑いましたが、今ではプライベートでも、こうしたツールを使っています。

オンライン授業の実施に当たって明らかになった最大の課題は大学生たちの学習環境でした。筆者が大学生の頃は、アルバイトで稼いだ「なけなしの貯金」を叩いてノートパソコンを買い、大学内の学生食堂や図書館、喫茶店でレポートの執筆に取り組むというのが流行りのファッションでした。筆者もアルバイトで貯めた全財産30万円を握り締めVAIOのノートパソコンを買い、どこへ行くにも肌身離さず持ち歩いたものです。

しかし、それは遠い昔のこと。大学生が自分専用のノートパソコンを持っている比率は30%を切るらしく、大半がスマートフォンで、授業の課題は家族共用のデスクトップパソコンか大学のコンピュータルームで済ませるようです。

大学構内への入構禁止措置が取られる中、パソコン画面の前に受講生を座らせるわけにはいきません。しかも、例えばZoomのようなツールはスマートフォンでも対応できますが、履修した授業数が多いとデータ通信量を超過し「ギガ不足」に陥ってしまいます。さらに非常勤講師を務める大学で筆者の授業を履修した受講生の中には、ルームシェアをしているため自分の部屋がなく、近所のカフェも休業しており、受講できる場所がないという人もいました。

もちろん、セキュリティ面におけるリスクもあります。受講生が一斉にアクセスしたことにより、サーバーがダウンしてしまうというトラブルも全国の大学で相次いでいます。授業中、何者かが不正に侵入して猥褻画像が流されるといった妨害行為が発生している大学もあるようです。
誰もが「日常」を失った新型コロナウイルスは、良くも悪くも私たち大学人の「当たり前」をも大きく変えました。確かに難問山積ですが、そう遠くないうちに「キャンパスのない大学」が現れ、わざわざ現地に行かなくても海外の大学に入学できる日が来るかもしれません。