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新型コロナウイルスが蔓延している陰で


2020年4月
野村明史


世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大しています。中東では、イランが最も深刻な事態に陥り、3月29日時点で感染者は38000人、死者は2600人を超えました。その次にトルコが約7400人、そしてイスラエルが約3800人の感染者を出し、中東でも新型コロナウイルスの感染が急速に拡大しています。

その一方で、コロナ危機に乗じて中東の二人の指導者が権力を手中に収めようとしています。その一人はイスラエルのネタニヤフ首相です。イスラエルでは、2019年4月と9月に議会総選挙を行いましたが、与党リクードと同党と同盟関係にある諸政党の議席が過半数に達しなかったため、20年3月に3度目のやり直し総選挙を行うという前代未聞の事態に陥っていました。またその間、ネタニヤフ首相は、汚職疑惑で起訴されるなど劣勢に立たされる状況が続き、3度目の総選挙後も組閣に向けた連立協議は難航していました。

しかし、新型コロナウイルスによる国家の危機を受けて、ライバルである最大野党の青と白のガンツ党首は、大連立に向けて協調する動きを見せています。コロナ危機は、思いがけずネタニヤフ首相の政治的延命を後押しすることになりました。

そして、もう一人はサウジのムハンマド・ビン・サルマーン(MbS)皇太子です。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、3月6日午前にサウジ当局がサルマーン国王の弟アハマド王子と甥のムハンマド・ビン・ナーイフ(MbN)前皇太子を拘束したと報道しました。両者とも王族の中で「スデイリーセブン」と呼ばれる有力一族出身で、王位継承の最有力候補としてたびたびメディアを沸かせていました。アハマド王子は、同母兄であるサルマーン国王と良好な関係と見られていましたが、最近のサルマーン国王一族による専制に不満を持っていたとも一部報道で伝えられていました。

今回のMbS皇太子の政敵排除が、新型コロナウイルスの騒動に紛れて行われたものか、それとも宮廷内の機を見て行われたのかは定かではありません。いずれにしても、この報道が事実であるならば、MbS皇太子の王位継承が大きく前進したことを意味します。

新型コロナウイルスで世界が恐怖に陥る中、二人の指導者は権力の掌握に向けて着実な一歩を踏み出しています。