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ブルネイのイスラーム法


2020年3月
吉野文雄


イスラームを国教とするブルネイでは、昨年シャリーア(イスラーム法)が厳格に適用されるようになり、同性愛行為を行った者には去勢を行うことまでが罰則として適用されるようです。「ようです」というのは、実態がなかなかつかめないという意味です。

それ以外にも石打ちなどの刑罰が科される犯罪行為もあります。法律の条文は数年前に公表されていましたが、部分的にしか施行されていませんでした。それが完全な施行に至ったのです。

先日、ジュディ・ガーランドの生涯を描いた映画「ジュディ 虹の彼方に」を見ましたが、同性愛の男性カップルが、イギリスでは1967年まで同性愛行為は罰せられていたと語る場面がありました。

コンピュータを開発したアラン・チューリングの生涯を描いた映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」でも、ゲイの主人公が懲役かホルモン注射かを選ぶ場面がありました。

半世紀ほど前まで同性愛行為を禁じていた国々の人々が、今それを厳格に禁じるようになったということで、ブルネイを批判しています。人権NGOのホームページで、ブルネイに法施行の撤回を求める記述を読むと、少し複雑な気持ちになります。

学生にこの話をしたところ、ある学生は、ブルネイは世界人権宣言に署名しているはずだから、いかにイスラーム国とはいえ、同性愛行為を罰することはまかりならぬと話しました。

もう少し稚拙な見解ですが、今やLGBTの権利を認めることは世界の潮流だから、ブルネイもそれに従うべきであると話した学生もいました。

ブルネイがこのような挙に出た背景には景気の低迷があります。原油価格が低迷し、生活水準が上がらない中、イスラーム信徒の不満を抑え込むための人気取りです。イスラーム的な施策を進めると国王の人気が高まるというのです。

ブルネイに限らず、東南アジアではイスラームの影響力が強くなりつつあります。インドネシアでは、イスラームが国教ではないことをもどかしく思っている人々が多くいます。今後、さまざまな摩擦が生じる兆しが見えています。

このコラムは英語の情報をもとに書いたので、もしかすると訳として不適切な、または理解不足の箇所があるかもしれません。今年の夏にはブルネイに調査に赴こうと思っているので、そのさいに正確なところを学んでくるつもりです。