グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

検索

TOP >  コラム >  北朝鮮問題と日本の役割

北朝鮮問題と日本の役割


2019年6月
武貞秀士


昨年以降、北朝鮮は中国、韓国、米国、ロシアと首脳会談を重ねてきました。その過程で南北朝鮮は事実上の終戦宣言をしました。米国、中国、ロシアと北朝鮮は対話を通じて問題解決をすることで一致しました。しかし、北朝鮮が核兵器を放棄するまでには至っていません。核兵器の放棄への道があらためて険しいことが判明しました。

北朝鮮の核兵器放棄のプロセスと体制保証の中身について、各国の本音の違いが首脳会談を通じて明らかになってきました。北朝鮮は米国にとり朝鮮戦争を戦った相手です。米国が主導して問題解決を図りたいでしょう。北朝鮮主導で朝鮮半島が統一されることを避けたいのは、それが在韓米軍撤退、米韓同盟終焉を意味し、韓国にある米国資産の喪失につながり、中国、ロシアの影響力が増大するからです。

強いアメリカを甦らせたいトランプ大統領は、韓国防衛のために負担する経費を節約したいのも事実です。非核化が早期に実現しなくても米朝協議を続けるかかぎり、戦争を回避でき、韓国防衛のコスト削減ができます。トランプ大統領は、北朝鮮の非核化達成を対話のプロセスの出口に置きつつあります。

中国は北朝鮮の非核化を望んでいますが、戦争が勃発しないのであれば、北朝鮮が最も頼りにする国が中国であり続けるかぎり、非核化達成を先送りしても良いと考えています。中国が金正恩体制の経済再建を支援するのは、金正恩体制が崩壊するときは、朝鮮半島有事の可能性があるからです。有事により米国の軍事的役割が増大することには中国は反対です。それに中国が北朝鮮内に持つ資源開発に関する権益を保護するためにも朝鮮半島の急激な現状変更は阻止したいでしょう。

ロシアのプーチン大統領は、沿海州の経済発展にとり北朝鮮の羅津港や鉄道などの地政学的条件の活用が不可欠であると考えて、ウラジオストクでの東方経済フォーラムで強調してきました。ロシアは北朝鮮内の既得権益保護のために朝鮮半島の現状維持を望んでいます。

日本の北朝鮮政策は、このような関係諸国の同床異夢の現状を踏まえる必要があります。拉致、核、ミサイル、日朝国交正常化という課題を解決するために2002年9月の「日朝平壌宣言」の趣旨に基づいた交渉戦略が必要になっています。膠着状態の米朝協議、南北対話という事態を前にして、日朝首脳会談は開催のタイミングが重要になりつつあります。