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ペット問題


2018年12月
富坂 聰


勤労感謝の連休中、中国のネットを一人の若い女性の動画ニュースが騒がせた。

動画のなかの女性は若くて美人。最先端のファッションに身を包み、愛玩犬を連れて散歩する姿は、さながらアッパーな暮らしを謳歌しているかのごとくであった。

だが、場面は一転。動画を撮っていた人に女性が近づいてくると、いきなり顔をゆがめて平手打ちをくらわしたのである。

この動画、リードをつけずに犬を散歩させていたことを注意した人が、聞く耳を持たない飼い主を撮影し始めた直後に起きた暴行をとらえたものだ。

もちろん女性はその後、警察の世話になったのだが、その際、女性がペットを飼育するために必要な正式な許可証を取っていなかったことも判明したという。

いま、中国では犬にリードをつけないで散歩をさせる飼い主が多く、社会問題になっている。

というのも、それを不快と思う人々との間で深刻なトラブルが発生しているからだ。
今年8月、上海市でリードをつけずに散歩させていた犬の飼い主に注意した親子が、逆切れした飼い主から暴行を受け、父親が子供の目の前で殴り殺されるという悲惨な事件も起きた。

杭州市では6歳と3歳の子供と散歩中、遭遇した犬に子供たちが追いかけまわされ、恐怖を覚えた母親が足で犬を蹴って防戦したところ、やはり飼い主から暴行され、指の骨を折るけがを負うという事件も起きている。

広州市でも、大型犬を連れていた女性が、その犬に吠え掛かられた小型犬の飼い主の男性から暴行を受けるという事件が起きているという具合だ。
こうした事態を受けて、広州市では2009年に飼育が禁止された「人間に危害を加える可能性のある危険な30数種の犬種」の取り締まりを徹底し、街で見つけ次第、飼い犬であろうとなかろうと捕獲するという動きを見せている。

リードをつけない飼い主が共通してする主張は「怖がらないで、この子は咬まない」というもの。

同じ理屈で「この子は病気にならない」と狂犬病の予防もしない飼い主も多く、中国では大きな問題となっている。

今年7月には21歳の大学生が狂犬病で死亡し、同じ月に4歳の児童も犠牲になっている。

隣国での事件だが、しょっちゅう取材に訪れる筆者は他人事ではない。なんといっても日本では狂犬病は絶滅宣言されていて、予防接種を受けようにもできないのだ。

やがて中国のせいで予防接種が身近になるなんてことのないよう取り組んでほしいものだ。