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オホーツク海の流氷と水産資源


2018年8月
鈴木祐二


オホーツク海は、地球表面の海の面積の0.4%にあたる約152.8㎢を有する「縁海」(大陸、半島、列島に囲まれた海域)です。平均水深は838mですが、中央部は1000~1600m、南部の千島列島や日本の国後・択捉両島の北側には千島海盆が広がり、最深部は3658mです。数字的には富士山の剣ヶ峰(標高3776m)に近い「深海」となっています。

新聞報道(2008/7/6)によると、日本・台湾・韓国・ロシア・米国・カナダ・中国・バヌアツの8カ国からなる北太平洋漁業委員会(NPFC)の年次会合で、北太平洋の公海部分におけるサンマ漁に関する漁獲規制(資源管理のため地域全体の総漁獲量に上限を設けようという日本提案)が、中国・バヌアツ(人口約25万人の南太平洋南西部の島嶼国家)両国の反対で見送られました。4分の3以上にあたる6カ国が賛成していますので、規制導入の条件は満たしていますが、全会一致による規制の実効性確保を重視するため、導入は先送りされました。気になるのは「中国の立場を支持する」というバヌアツの反対理由です。南太平洋から、反対要員として参加したに違いありません。

サンマの不漁は北海道東方沖の公海での中国や台湾による「先取り」の影響が大きいとの見方が有力で、特に中国はこの5年で漁獲量を20倍超に拡大し、台湾の水揚げ量は2013年以降日本を追い抜き1017年は10.7万tに達しています(なお、台湾は中国と違い今年の日本案に賛成票を投じました)。この年、日本は8.5万tで約50年ぶりの不漁に見舞われました。今年も同様に不漁が予想され、関連業界は痛手を覚悟しなくてはならないでしょう。

サンマ不漁の原因として幾つかの理由が挙げられますが、オホーツク海の流氷減少もそのひとつだと考えられます。気象庁によれば、1970年以降オホーツク海の海氷は10年毎に約4.4%ずつ減少しているそうです。別の資料では、北極海の氷も10年毎に約2.7%ずつ減少しているそうですが、オホーツク海は北極海以上のペースで、これに伴い流氷も減少しています。海水が凍るとき、塩分の大部分は海水中に排出され、海の中層に沈み込み、北太平洋の広範囲で循環します。

この中層域の重い海水は、光合成を行う植物プランクトンの栄養分となる鉄分やリン、窒素など様々な栄養素を運んで北太平洋へ流れ出て、表層にある海水と混ざり合います。鉄分に代表されるこれらの栄養分は大陸から川を通ってオホーツク海へと流れ出したものです。植物プランクトンはオキアミなどの動物プランクトンに補食され、動物プランクトンがサンマなどの餌になり、それを人が食べるという食物連鎖の土台を支えているのです。このオホーツク海の鉄分は2000㎞以上離れた北太平洋中部海域まで運ばれ、各種の水産資源を養っています。オホーツク海の海氷面積の減少により海洋生態系が変化し、結果的にサンマなど回遊魚の漁獲量が減るのです。

この問題でも中国の存在が目につきます。傍迷惑を無視して、常に自己利益追求を怠らない姿には、いつもながら辟易します。