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SF小説『北京折叠』


2017年12月15日
澁谷 司


2012年に発表された郝景芳(当時、清華大学女子大学院生)のSF小説『北京折叠』(英語のタイトルは“Folding Beijing”)は興味深いと思われます。同作品は、昨2016年、第74回ヒューゴ・アワード(Hugo Award)中短編小説最優秀賞を受賞しました。

未来の北京六環路内には、3つの空間が存在し、2日48時間サイクルで回っています。特権階層500万人は、住みやすい第1空間で、48時間の半分の24時間(朝6時から翌朝6時まで)を享受できます。

そのあと、2500万人の中間層は、第2空間で16時間(次の日の朝6時から夜10時まで)16時間を使用できます。残りの5000万人の下層は、ごみごみした第3空間で、48時間中、たったの8時間しか持っていません。

第3空間に住む下層のうち、3000万人が洋服・食料品・燃料・保険等を販売し、残りの2000万人はゴミ作業員です。

刀という姓の主人公(48歳独身)は、第3空間のゴミ作業員でした(彼には幼い養女がいます)。刀は第2空間の大学院生である秦天のために、危険を冒して第1空間へ行こうとします。

各空間の異動は厳しく制限され、捕まると刑務所に入れられてしまいます。

第1空間には、秦天が、実習の際、偶然出会った3歳年上の女性、依言がいたのです。その時、依言は秦天に優しく接しています。そこで、秦天は彼女に恋をしました。

刀は、秦天のラブレターを届けようとして、第1空間にいる依言に会います。しかし、すでに依言は別の男性(呉聞)と結婚していました。秦天が依言と会った時には、依言は婚約していたのです。

依言は刀に対し、自分は秦天が好きだと伝え欲しいと言います。ただし、秦天には彼女が結婚していると言わないで、と頼みました。依言は秦天に嫌われたくなかったのです。

依言はバッグの中から、1万元(約17万円)札5枚を出しました。刀には見たこともないおカネです。刀は秦天に対し嘘をつきたくなかったので、渋っていると、依言は更に1万元札を5枚出しました。結局、刀はカネの魅力に負け、依言から秦天への伝言を預かりました。

刀は依言と別れてまもなく、第1空間の巡邏部隊に取り押さえられてしまいます。ところが、幸運にも、その中に第3空間から第1空間に這い上がった年長の人物(葛大平)がいて、刀を釈放してくれました。

刀が第2空間にいる秦天に会って、依言から預かった伝言を告げ、第3空間へ戻ります。

郝景芳はSFという手法を使って、現代の北京の状況をリアルに描写しているのではないでしょうか。