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対話と圧力


2017年11月1日
武貞秀士


2017年春以降も北朝鮮のミサイル発射が続きました。8月と9月、日本上空を通過したミサイル「火星12型」は日本社会を震撼させました。北朝鮮が9月3日の核実験を水爆実験だったと発表したあと、国際社会は北朝鮮への圧力を強化し、11月はトランプ大統領が日本、韓国、中国を歴訪して対北圧力を要請しました。

米国は軍事的解決という選択肢を排除していませんが、それは日本、米国、韓国の足並みが揃うことが前提です。10月末、文在寅政権は中国に対して米国のミサイル防衛には組み込まれないこと、日米韓関係は同盟関係にはならないことを約束しました。日米韓の安保分野の協力体制は余談を許しません。経済的に苦境にある韓国が米国、中国の間でバランス外交を鮮明にしつつあるからです。韓国経済にとり最大の貿易相手国である中国との関係修復は死活問題ですが、トランプ政権は韓国が米韓同盟を薄めてでも中韓関係修復に向かうことに対し、不満を抱いています。

中国とロシアも日米が主導する北朝鮮に対する圧力主体の政策に距離を置いています。国連制裁のもとでロシアと中国は北朝鮮経済を支えてきました。北朝鮮の羅津港を活用しシベリア鉄道と朝鮮半島鉄道を連結することで沿海州経済を建て直そうとするプーチン政権にとっては、北朝鮮核問題解決は二の次です。北朝鮮の地下資源が中国の工場に必要だとする中国は、北朝鮮に対する制裁を続けることができるのかどうか疑問です。

北朝鮮の政策は核戦略に基づいています。すなわち、統一に際して米国の軍事介入を阻止するために、米国の首都を破壊することができる大陸間弾道ミサイルを完成する。非対称的な核戦力であっても、相互に確実に首都を破壊できる能力をもてば、米国が朝鮮半島の警察官の役割を放棄すると見ているのです。「核開発は最終段階に到達した」という北朝鮮の次の一手は米朝関係正常化提案でしょう。最近の北朝鮮の沈黙、米朝間の水面下のやりとり、トランプ大統領が北朝鮮に送る「秋波」は、北朝鮮の核戦略と関係がありそうです。日本の北朝鮮政策の原則は、圧力だけではなく「対話と圧力」であったことを思い出しました。