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プーチン大統領の意外な4選戦略


2017年10月15日
名越健郎


来年3月18日に実施されるロシアの大統領選で、本命のプーチン大統領が近く4選に向け出馬表明する見通しです。当選は確実で、2000年に就任した大統領が6年間勤めるなら、計24年の長期政権となります。20世紀以降のロシアの歴史では、スターリンに次ぐ長期政権。戦後の主要国でも異例の長さとなります。

反政府活動家で若者の人気が高いアレクセイ・ナバリニー氏が10月7日の大統領の65歳の誕生日に反政府デモを呼び掛け、80都市で集会が行われましたが、あまり盛り上がらなかったようです。現状では、選挙は大統領への信任投票となりそうです。

ロシア紙「ガゼータ」(9月18日)によれば、プーチン陣営は4選戦略として、医療改革、教育、年金、給与増、汚職対策などを目玉とする方針で、関係機関と諸提案を検討中です。安全保障や外交も再選戦略に含まれますが、国民の関心が高い民生分野を中核に据えるとのことです。

しかし、医療、教育、年金なら、どこかの国の政治家と変わりません。プーチン大統領の真骨頂はなんといっても、地政学的な野望や愛国主義的外交であり、ウクライナ領クリミアを併合したり、シリアの反政府勢力を空爆して国際社会を驚かせ、国民の愛国主義を高めてきました。

国際秩序に挑戦し、米国を出し抜くマッチョな戦略が国民に受け、米誌フォーブスから4年連続で「世界で最も影響力ある人物」に認定されています。それが、医療や年金重視では並みの「三流政治家」にすぎません。

もっとも、ロシア経済はそれほど追い詰められているようです。昨年まで2年間マイナス成長で、国民消費も5年連続で低下しました。国内総生産(GDP)に占める国防予算は4・7%まで上昇し、遂に今年から国防費を減額しました。閉塞感に国民の不満が高まりつつあるようで、プーチン大統領も「苦手」の教育・医療・年金に取り組まざるを得ないようです。

プーチン大統領にとって、最後の6年は茨の道になるかもしれません。米国のシェール石油生産や世界的な省エネの進化で、原油価格がかつてのように上昇するとは思えません。次の6年も欧米の厳しい経済制裁が継続され、ロシアは世界的に孤立しそうです。国民の関心が財布の中身にあることは古今東西同じことで、プーチン大統領の真価が問われるのはむしろこれからかもしれません。