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設立50周年を祝うASEAN


2017年8月15日
吉野文雄


この8月8日、東南アジア諸国連合(ASEAN)は、設立50周年を迎えました。ASEANは、1967年8月8日に、バンコク宣言を発して設立されたのです。

当日はネットで祝賀式典の模様が中継され、参席した人々だけでなく、視聴したわれわれもなにか晴れ晴れとした気分を味わえました。また、ASEAN事務局のウエブサイト上には、祝賀行事に関連するリソースがいくつもアップロードされており、祝賀ムードはいやがおうにも高まりました。

しかし、ジャーナリズムの中には辛口のコメントもありました。毎度のことですが、「同床異夢」というのです。とくに、加盟10カ国の中国との距離の取り方が異なっていることから、足並みが乱れているのです。カンボジアやラオスはもっとも中国に近く、インドネシアは距離をとろうとしているようです。

私にとって、ASEANを一言で表す四字熟語は、「美辞麗句」、「自画自賛」といったものです。

祝賀式典に先立って開催された閣僚会議の共同声明は、2015年に設立されたものの、2025年を目標としてその実を挙げようとしているASEAN共同体が中心的なアジェンダとなっていました。段落数を数えると、全部で217段落のうち、88段落がASEAN共同体に関する内容です。

さらにその内訳を見ると、政治安保共同体に関するものが31段落(全体の14%)、経済共同体に関するものが16段落(同じく7%)、社会文化共同体に関するものが41段落(同じく19%)でした。

この内訳がASEANの置かれている状況を象徴しているように思われます。政治安保共同体については、人権を含むし対中関係も関わるので、重要ではあるが触れにくいところがあります。経済共同体については、ASEAN自由貿易地域という目に見えた成果をあげているがさらなる統合には大きな障害があり、具体的には触れにくいのです。社会文化共同体は保健や教育と幅が広く、優先順位さえつけがたいのですべてのアジェンダを並べてみたというところでしょう。

ASEANが統合を進めるにあたって課題は山積していますし、求心力も強くありません。ただ、幸いにして域外国はさまざまな思惑からASEANには好意的です。その好意を統合に活用できるかどうかはASEAN自体にかかっているといってよいでしょう。