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低迷する中国経済と「一帯一路」国際サミット


2017年6月15日
澁谷 司


今年(2017年)1月17日、遼寧省長が、2011年~14年まで、同省のGDPは20%以上、水増しされていたと初めて公表しました。

さらに、同省長は、昨2016年1月~9月までの遼寧省のGDPはマイナス2.2%だったことを明らかにしたのです。
これから類推すると、中国経済の厳しい現状が垣間見られます。

昨年、中国のGDPは6.7%で、6.6%のインドを抜き、世界1の経済成長を達成したと中国政府は主張しています。けれども、これはブラックジョークに過ぎないのではないでしょうか。

中国政府が公表した①発電量の推移、②貨物輸送量の推移、③固定資産投資、④中国の輸出入の推移等を見れば、2015年と16年の両年、中国経済が2008年の「リーマン・ショック」時よりも悪いことは火を見るより明らかです。

また、「中国一辺倒」を掲げる馬英九政権の下、中国経済の悪影響を受けた台湾のGDPが一時マイナスになりました。他方、中国富裕層に依存するマカオ経済(GDPの約60%がカジノが占める)が激しく落ち込んだりしました。これらも中国経済低迷の傍証となるのではないでしょうか。

北京政府としては、財政出動をするのが景気回復には1番効果的です。けれども、中央の財政赤字が大きく(最低でもGDPの150%程度と言われています)、それも難しくなっています。

そこで、習近平政権は、どうしても(高速鉄道以外の)外需を求める必要があります。
今年5月14、15日、北京で「一帯一路」国際サミットが華々しく開催されました。ロシアのプーチン大統領をはじめ、29の国家元首・首脳、約130ヶ国の政府官員および世界の富豪やビジネスマン約1500人以上が参加しています。

実は、2013年に「一帯一路」構想が持ち上がって以来、すでに5兆人民元(約75兆円)あまりが投じられています。けれども、過去3年来、「一帯一路」では、全部で5つのプロジェクトしか完成していません。①サウジアラビアの石油精錬所、②バングラデシュの橋、③パキスタンの道路、④トルコで埠頭を購入、⑤中国国内で、天然ガスダクトの補修だけです。

おそらく北京政府は、「一帯一路」で国内の過剰生産を消費し、中国経済の衰退危機やリスクを転嫁しようとしているのではないでしょうか。また、対外投資によって、国内企業、とりわけ国有企業の発展を促すつもりではないでしょうか。

一方、習近平政権は、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)の活用を促す狙いがあると思われます。