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日中外交


2017年3月15日
富坂 聰


全国人民代表大会の真っ最中である3月8日、記者会見に応じた王毅外相は、今年が日中国交正常化45周年に当たることを訊かれると、歴史認識問題で日本に釘を刺し、「日本には歴史の逆行をたくらむ者もいる。我々は日本と関係改善したいが、日本はまず自らの心の病を治す必要がある」と発現し、記者を驚かせました。

心の病――。
発言の意味は、日本が中国の発展をどうしても受け入れられないことを指したものだといわれます。

王毅外相といえば、とにかく日本に対する態度が厳しいことで知られる人物です。

中国の外交官の中でもジャパンスクールと呼ばれる人々の特徴は、日中関係が悪化した時に、とにかく先頭に立って日本を非難することで自分を守らなければならないというものがあります。日本でもそうですが、中国と日常的に接していればチャイナスクールとレッテルを貼られ、「中国寄り」との誹りを受けてしまいます。ときにはスパイ扱いなのですから、仕事をする気はなくなるでしょう。

その体質が染みついたという以上に利用して出世したのが王毅という人です。
外交という意味では中国が圧倒的に重視するのは米国です。それに比べて対日外交など豆粒のような存在です。しかし、その日本語グループから外相が続いたのですから驚くべきことでしょう。

まさに王毅が出世して、日中外交は最悪になったという状況です。

しかし、それは日本も同じことです。中国に足を運び苦労して人脈を築き、中国を分析しても、自分が気に入らない結論であればスパイとレッテルを貼られてしまうのです。それよりもネットで集めた情報で、「中国が大変だ」と書いた本が売れるのですから、真面目な人ほどやる気をなくしています。

気が付けば日本には中国の上層部とまともに話すことができるルートがなくなり、情報も全く入らなくなっています。

2月13日、北朝鮮が発射したミサイルの情報は米軍も十分に把握できていなかったようです。これを受けて日本の永田町では中国の存在がクローブアップされる動きがありましたが、そのルートは全くないのです。

その一人は、今後、北朝鮮問題において米中が2国しか知らない情報を共有して日本には伝えてこないことが起きるかもしれないと心配していました。

心の病と日本を貶す王毅の人間の小ささは笑うしかありませんが、経済における日中の本格的な逆転は避けられないのは確かです。おそらく日本の技術を「中国がパクる」という言葉は今年を境に無くなるでしょう。その現実を1秒でも早く直視することが、本来であれば日本再生の最も重要な道なのでしょう。