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台湾にある世界遺産の候補地


2017年3月1日
丹羽文生


アメリカのグランド・キャニオン国立公園、中国の万里の長城、日本の原爆ドーム・・・。世界には1000ヵ所を超える遺跡や自然環境が「世界遺産」として登録されています。

ところが、「顕著な普遍的価値」がある美しい自然景観、歴史的価値の高い文化史跡を数多く有しながら、台湾からは1ヵ所も登録がありません。中国による妨害でユネスコ(国連教育科学文化機関)から門前払いを食らわされているためです。ユネスコに加盟しているのは2017年1月1日段階で195ヵ国、準加盟地域10地域で、このうち、1972年11月に採択された世界遺産条約の締結国数は192ヵ国に及びます。

1971年10月、中国大陸にある「中華人民共和国」の加盟により、台湾にある「中華民国」は国連から脱退してしまいました。これにより、ユネスコだけでなく、国連と連携関係にある「専門機関」からも中国の圧力で追い出されてしまいます。世界遺産条約には「顕著な普遍的価値を有する文化及び自然の遺産を共同で保護するための効果的な体制を確立」し、「無類のかけがえのない物件を保護することが世界のすべての国民のために重要である」と謳われています。

したがって、政治的ファクターが介入してはならないことが原則であることは言うまでもありません。もし、介入すれば、それこそ世界遺産そのものの価値が薄らいでしまいます。

台湾文化部文化資産局ではユネスコの登録基準に従いながら審査をした上で、世界遺産の候補地として太魯閣国家公園、棲蘭山ヒノキ林、卑南遺跡及び都蘭山、阿里山森林鉄道、金門の戦地文化、馬祖の戦地文化、大屯火山群、蘭嶼島の集落及びその自然景観、淡水紅毛城及び周辺の歴史建築群、金瓜石集落、澎湖玄武岩自然保護区、台湾鉄道旧山線、玉山国家公園、楽生療養院、桃園台地の埤塘、烏山頭ダム及び嘉南大用水路、屏東パイワン族の石板屋集落、澎湖石滬群の全18ヵ所を挙げています。しかも、そのうち半分の9ヵ所が日本と深い係りがあります。

もちろん、台湾のユネスコへの加盟は容易なことではありません。しかし、パレスチナのように国連に未加盟ながら、例外的にユネスコに加盟し、2件の世界遺産への登録が実現した例もあります。純粋に世界遺産に相応しい候補地が政治的妨害によって無視され続けている状況を見過ごすことはできません。

東日本大震災、昨年4月の熊本地震で台湾の人々は、「親日」という言葉だけでは言い尽くせないほどの深い友情、絆を示してくれました。登録に向けて、少しでも前進するよう応援していくことが日本としての恩返しにもなるのではないでしょうか。