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東南アジアは親日か


2017年2月15日
吉野文雄


膨張する中国は南シナ海で東南アジア諸国と対峙、東シナ海では日本に対して領土を要求しています。日本と東南アジアは共通の敵に対しているわけで、日本では東南アジアを盟友とみなす雰囲気が醸成されているようです。しかし、ほんとうに敵の敵は味方でしょうか。

昨年夏マレー半島を這うように旅したことは前回書かせていただきました。そのさい、プラチュアップキリカンという長い名前のタイ南部の町に1泊しました。そこにはウィング・ファイブというタイ空軍の基地がありました。空軍基地といってものどかなもので、基地内に海水浴場があり、誰でも入ってのんびりできます。

基地の歴史などを示す博物館があって、その前に大きな石碑が建っていました。かなりの人数がレリーフのように描かれています。その場にいた軍人さんにきくと、1941年にその地に上陸した日本軍のようすだということです。日本軍はパールハーバーを奇襲する前後にマレー半島に上陸したのです。

日本の軍人が地元住民を抑圧し、その日本軍をタイ国軍が追い詰めるような図柄でした。日本人としてあまり愉快ではありませんでしたが、抑制の効いたタッチで冷静に史実を活写しているように見えました。

このような日本軍の遺産は東南アジアのあちこちにあります。インドネシアの西の果てウェー島にはいまだにインド洋に向かって日本軍の残した大砲がありますし、各地の華僑・華人が抗日闘争を記憶に残す碑を建てています。

東南アジアで、町行く人に「日本は好きですか?」と問うと、多くの人が「大好きです。トヨタ、パナソニック、ナルト。日本製品がなければ暮らしが成り立ちません。」というような答えが返ってくるでしょう。しかし、同じ質問を中国人や韓国人が発するとどうでしょうか。おそらく「祖父は日本軍に殺されました。あまりよくは思いません。」というような回答も出てくるでしょう。

東南アジアの人々はしたたかです。それが証拠に、インドネシアの高速鉄道プロジェクトでは日本は中国を前に辛酸をなめました。ミャンマーでも日本は8000億円に及ぶ債務を放棄しましたが、携帯電話網を受注できませんでした。

日本は中国などと天秤にかけられているのであり、日中関係が冷え切っているのは東南アジアにとって願ってもない状況なのです。日本人には、これといった根拠もないのに東南アジアは親日だなどと思い込まず、現実と歴史を直視してほしいものです。