グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

検索

TOP >  コラム >  海上民兵

海上民兵


2016年9月15日
富坂 聰


オリンピックの報道が過熱するなか、日本の海は一つの試練を迎えました。5日午後1時30分ごろ、一隻の中国籍漁船が尖閣諸島周辺の領海に侵入し、続いて中国海警局の船も領海に入りました。日本側を驚かせたのは同海域に押し寄せた中国漁船の数です。200隻とも300隻ともいわれました。もちろん漁船の周囲には中国の公船(海警、海監、漁政)もいて、同月下旬までに最大で15隻が日本の接続水域や領海に入りました。

日本として十分警戒すべき事態でしょう。ただ「いよいよ『海上民兵』が正体を現した」などと大騒ぎする日本のメディアには首をかしげざるを得ませんでした。

日本で喧伝された「海上民兵」とは、おそらく普段は漁民を装いながら、軍人としての任務を遂行したり、いざというときには兵士として戦闘に加わる隠れた兵士というイメージなのでしょう。しかしそんな先入観を抱き中国の漁村に行けば、きっと「海上民兵」の姿に拍子抜けすることでしょう。

第一に彼らは隠れた兵士ではなく法律上も正規兵だという点です。所属する組織は各末端政府の人民武装部というだけで、それ以外はただの漁民です。

この制度が確立したのは毛沢東時代です。もともとは台湾海峡有事を想定した組織で、当時の任務は不足する軍の輸送力を補うことでした。また当時の中国では「全民皆兵」が当たり前で、18歳から50歳までの男性は自動的に組織に組み入れられることになっていました。それが時代の変化にともない財政的にも負担となり18歳から35歳までの男性と縮小されたのです。組織自体は現在も存続していますが、定期的な訓練などはありません。

話を日本の海に戻せば、やはり問題は海警局や人民解放軍海軍であって、スパイごっこではありません。それは韓国の近海から南シナ海に至るまで、もう10年近くも熾烈な海の対立を続けてきたのに「海上民兵」が機能したケースなどあるのでしょうか。
中国漁船には正規と非正規があり、正規の魚船は100%政府の管理下にあります。これは捕らえた船の通信設備を比較すれば一目瞭然なのですが、日本では赤サンゴ事件で日本の海を荒らした漁船と正規の漁船が混同されています。

それにしても日本は今回の騒動で大騒ぎでしたが、南シナ海の問題をめぐり東シナ海で何らかの報復に出ることは中国のメディアを見ているだけで十分予測できたんじゃないでしょうか。「海上民兵」などという前に、すべきことをきちんとすべではないでしょうか。