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不機嫌な東南アジアの人々


2016年8月15日
吉野文雄


この夏、マレー半島を這うように旅しました。国でいうと、タイ、ミャンマー、マレーシア、シンガポールです。鉄道、バス、船、タクシーなどを乗り継いで、人々の顔を見、声を聞くことを心がけました。

タイやマレーシアでは、現地の人々に笑顔がないのが気にかかりました。タイ南部のラノンという町で、創業まもないおしゃれなホテルに泊まりました。予約もなくたどり着いた私に対して、受付の男性は笑顔などまったく見せません。まるで罪人に対するがごとく睨みつけ、私のクレジットカードをもてあそぶのです。

シンガポールには、マレーシア最南端のジョホールバルからバスで入国しました。マレーシア側で出入国管理の方法が分からなかったので、案内の人に尋ねました。自分のスマホに熱中していた彼女は、それを遮られたのに腹を立てたのか、「自分で行け(You go.)」と一喝したのでした。

シンガポールに入ると事情は一変しました。中国系であれ、マレー系であれ、こちらから声をかけると、とりあえずは笑顔です。私は、本当に日本に帰国したかのような気になったのでした。

他にもいろいろな経験をしたのですが、タイやマレーシアではホスピタリティが欠けているし、職業倫理もシンガポールとは異なっているように感じられます。それが、経済発展段階の差なのか、エスニック・グループによる特性なのか、国柄なのか、明言はできません。しかし、私の乏しい経験からいうと、経済発展段階の差の影響が大きいのではないでしょうか。

日本でも、たとえばバスの運転手さん。私が子どもの頃は、乗客を無視したり、しかりつけたりするようなタイプの人もいたように記憶しています。今、少なくとも東京にそんな運転手さんはいないでしょう。

1980年代、中国の北京の友誼飯店のフロントで怒鳴りつけられたり無視されたりした日本人は多いのではないでしょうか。笑顔などありません。鍵やパスポートを放り投げるように渡すのも普通だったのではないでしょうか。今、まだ友誼飯店があるかどうか知りませんが、もしあれば、30年前のようなことはしていないでしょう。

日本や中国の経験から演繹すると、タイやマレーシアの不機嫌な人々が真に腹を立てているのは、経済発展水準の低さではなく、国内の経済格差かもしれないのです。自分の仕事が社会に認められていないとか、能力相応の報酬が得られないとかです。そうであれば、外国人につらく当たるのはやめてほしいですね。