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オバマ大統領の広島訪問


2016年6月1日
川上高司


オバマ大統領は5月27日午後、現職のアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪問しましました。オバマ大統領は安倍総理とともに平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花した後、スピーチを行いました。そして、原爆で亡くなった被爆者を追悼するとともに、「核のない世界」を将来にわたって追求していく必要性を世界に訴えました。

オバマ大統領のスピーチは、思ったより長く、力の入った壮大なものでした。「核なき世界」を訴えた2009年のプラハ演説からすでに広島でのスピーチを考え抜いてきたかのような内容でした。そもそもオバマ大統領は「核のない世界」を訴えたプラハ演説でノーベル平和賞を受賞しました。

その後、オバマ大統領はすぐに「核軍縮」と「核の不拡散」の両方を行っていきました。前者に関しては米露間でモスクワ条約を締結し核弾頭数とその運搬手段の削減に合意しました。ただ、その後ウクライナ問題で進展が見られていないのでストップしています。また、後者に関しては、去年のイラン核合意がありました。これは画期的なことです。さらには核セキュリティサミットを開催し「核のない世界」へ向けての世界的な取り組みを率先して提案しています。ただ、北朝鮮の核開発などが今後の大きな課題として残っています。オバマ政権には、達成できたこと、そして達成できなかったことが両方があるといっていいでしょう。

しかし、今回、広島で被爆国日本と核を投下した米国が手を取り合って「核のない世界」を実現していくことをうたい、オバマ政権の8年間を締めくくりにふさわしいものとなりました。それは同時に日米間の戦後政治の幕引きにもなったと言えましょう。

昨年、安倍総理は米上下両院での演説を行い、先の大戦で戦った日米を名実ともに和解させ、米国に対する「戦後政治の総決算」を行ったことが大きいと考えられます。オバマ大統領の広島訪問およびそこでの演説は、真に安倍総理の昨年の行動に対する答礼ともいえましょう。

また、昨年策定された、新たな日米防衛協力のための指針(ガイドライン)と安全保障関連法の施行などを行い日本が対等な同盟としてグローバルに活動していく環境を整えていました。こうした日米同盟の深化がオバマ氏の広島訪問につながったのでしょう。

オバマ氏の広島訪問により、世界は日米同盟の強固さを目の当たりにすることとなりました。中国などが日米関係につけいる隙を減らすことにもなります。今後は、いかに米国を巻き込みながら、東シナ海、南シナ海での抑止力を強化していくかが課題となるでしょう。