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あるべき参議院像を考える機会に


2016年3月15日
丹羽文生


今年は3年に1度の「参院選イヤー」です。安倍再登板から3年が過ぎました。過去2回の国政選挙で連勝し、「1強多弱」の状態が続く中、永田町では夏の決戦は「衆参ダブル選」になるのではないかという噂も広がっています。

そんな中、相変わらず低調傾向にあるのが参議院改革に関する議論です。毎回そうですが、本来、参院選だからこそ論じられるべき課題であるにも関わらず、どうも、このテーマに真正面から切り込もうとする政党が見当たりません。

そもそも、参議院改革なる言葉が出てくる所以は、その存在意味の曖昧さにあります。参議院創設時、憲法学の泰斗としても知られた国務大臣の金森徳次郎は、2院制採用の理由について「1院制の場合、誤った議決も、そのまま確定的となり、仮にそれを改めれば、議会の権威を損ねることになりかねず、第1院の犯した過誤と欠陥を修正するという作用を第2院に求める」と説明し、続けて参議院に期待されることとして、第1に「1院では十分に捉えきれない民意を代表し1院の偏向を補完することができる」、第2に「第1院の陥る過ちを批判し、専制化の危険を抑制し、調整する機能を営むことができる」、第3に「長期の視野に立つ政策立案、慎重で成熟した立法作業を営むことが可能である」と述べました。

参議院改革が必要なのは結局、今日の参議院は、この金森の答弁とは随分と懸け離れたものになっているからではないでしょうか。これまでも参議院は、衆議院に追随し、衆議院に対する抑制・均衡・補完の機能を果たさず、政策論議も二番煎じになっていることから「ミニ衆議院」、「衆議院のカーボンコピー」と揶揄されてきました。さらに、有名スポーツ選手やタレントといった著名人が多いことから「芸能院」、衆院選で落選した前議員が返り咲くための「救済院」とも言われています。与野党勢力が逆転し、いわゆる「ねじれ現象」が生じた時は、国会運営が停滞し、その結果、有害との批判に曝されました。

「そもそも第2院は必要であろうか。もし第1院に一致するならば、それは無用であり、一致しないなら害悪である」とはフランス革命のイデオローグであるアベ・シェイエスの残した名言です。確かに理想的で完璧な第1院が存在するのであれば、第2院は不要であり、両院の機能が一致するのであれば、その価値はないと言えます。

「参院無用論」まで囁かれる以上、参議院そのもの廃止も含め、抜本的改革に向けて再検討していく必要があるのではないでしょうか。参院選まで半年を切りました。あるべき参議院像を考える機会にしたいものです。