グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

検索

TOP >  コラム >  初めてのインド

初めてのインド


2016年3月1日
吉野文雄


アジア経済論専攻と言いながら、インドには行ったことがありませんでした。そのインドのチェンナイに、2016年2月初めて訪れました。

私は1980年代にバックパッカーとしてアジアに深く関わるようになりました。当時のアジアを旅するバックパッカーにはインドを目指す人とそうでない人と2通りいたのではないでしょうか。当時、中国には現実的には入国できませんでした。

私がインドを目指さなかったことには、タイのバンコクにおける私的な経験が大きく影響しています。1983年春、2度目の東南アジア貧乏旅行をしていたときと記憶しています。バンコクのシロム・ロード奥にあった両替屋でトラベラーズ・チェックをタイ・バーツに両替したのです。

その両替屋の主人は白ひげにターバンを巻いた老人でした。国籍はタイだったかもしれないし、インド系だというのは思い込みにすぎないかもしれません。誤解の可能性があることを先に申し述べておきます。

その両替屋では何度か両替しており、どうも金額をごまかしているように疑っていました。そこで、お札をポケットにしまう前に、彼の目の前で確認しました。明らかに少ないので、「足りない」というと、そのインド系と思しき両替屋は、これ以上できないというくらいに顔をゆがめ、無言でいくばくかの札を私に向けて投げつけたのでした。

今の言葉で言うと逆ギレでしょう。貧乏な旅行者からわずかな金を巻き上げようとする(おそらく)インド系の両替屋に私も怒りました。そんな両替屋に頼らざるを得ない自分のみじめさもはっきりと認識しました。さらには、それほど大した金額ではないにもかかわらず両替屋を怒らせた自分の浅慮への後悔もありました。

その複雑な気持ちが、私をインドから遠ざけたのです。そのインドに初めて行ってきました。結論としては、チェンナイは東南アジアの町と大きくは変わらないということでした。チェンナイ在住の日本人にその感想を漏らすと、即座にデリーなど北部は全く違うよと教えられました。いずれにしても、もっと早くにインドに行っていれば、私の研究も少しは変わっていたかもしれないなどと思いました。

若いときの経験というのは、ことほどさようにその後の生活に影響するのだということも教訓とすべきでしょう。駅などで訪日旅行者を目にするたびに、日本で嫌な目に遭わないで帰ってくれればいいなと願っています。