グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

検索

TOP >  コラム >  プーチン大統領と東映ヤクザ映画

プーチン大統領と東映ヤクザ映画


2015年12月1日
名越健郎


「背中を刺されたようなものだ」「トルコはテロの共犯者だ」ー。トルコ軍戦闘機によるロシア機撃墜で、プーチン・ロシア大統領はこう言い放ちましたが、さすがに暴力装置・旧ソ連国家保安委員会(KGB)の将校出身とあって、言い回しが違います。往年の東映ヤクザ映画を彷彿とさせるドスの効いた発言で、新聞の見出しになります。

プーチン大統領はスラングを多用する粗野な発言が多く、「テロリストをネズミのように殲滅してやる」「糞ツボでぶっ殺してやる」と述べたこともあります。ぶっきらぼうな暴言・妄言が、保守派やブルーカラーにうけ、支持率が9割近い理由の一つです。

一方で、知性も高く、2000年の沖縄サミットの時、当時の森喜朗首相が源氏物語をイメージした2000円札を各国首脳に披露すると、「日本は不倫や近親相姦を題材にした小説を紙幣に取り入れるほど社会が堕落したのか」と述べたこともあります。古今東西の古典に精通している証拠です。

評論家のピオントコフスキー氏は以前、粗野なプーチン語録について、KGB体験よりも「育ちから来る本性だ」と語っていました。

本性と言えば、10月末に各国のロシア専門家を集めたバルダイ会議の講演で、プーチン大統領は「50年前、私はレニングラード(現サンクトペテルブルク)の路上で、一つの鉄則を学んだ。闘いが避けられない時、先制攻撃することだ」と漏らしました。

9月末に始まったシリア空爆についての発言ですが、大統領は自伝で、子供のころはガキ大将で、ケンカばかりしていたと告白しています。「その後、柔道と知り合って救われた。礼節を尊ぶようになった」とも述べていますが、「路上の鉄則」は、第二次チェチェン戦争、グルジア戦争、ウクライナ介入、シリア空爆と続くプーチン時代の軍事介入にも表れています。

先制攻撃を鉄則とする大統領にとって、トルコ軍機が「背中から刺した」ことは屈辱的で、このままでは引き下がらないでしょう。今後の展開は、東映ヤクザ映画の方が参考になるかもしれません。

それにしても、近年のロシアは安易な軍事介入が目立ちます。冷戦時代、旧ソ連は地域紛争で米国よりも自制を貫いていましたが、現在はオバマ米大統領が「抑制ドクトリン」(ニューヨーク・タイムズ紙)だけに、米露のバランスがおかしくなっています。

米経済誌フォーブスが11月、プーチン大統領を3年連続で「世界で最も影響力ある人物」に認定し、オバマ大統領をメルケル独首相に続いて3位に転落させたのも、言葉の重みが影響しているかもしれません。