グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

検索

TOP >  コラム >  爆買いへの反応

爆買いへの反応


2015年11月1日
富坂 聰


先ごろ『人民日報』は紙面のなかで、日本に爆買いに行く中国人に触れて、ネット上で高まる攻撃を批判。日本で見られる爆買い現象を擁護する言論を展開しました。

今年の国慶節休み、「40万人の中国人観光客が日本で爆買い 1000億元を消費」とメディアが報じると、中国国内には早速「売国奴」、「漢奸」、「走狗」といった言葉があふれました。なかには、「日本で買い物した金は、将来、戦車や銃弾を造る資金となって、巡り巡って我が同胞らを殺すことになるのだろう」といった書き込みも多く見られました。

こんな話を聞くと、日本人の多くは「あー、やっぱり最後はこうなってしまうのか」と、2012年の反日デモを思い出してしまうかもしれません。

爆買いする中国人の姿を見て、日本では「実は中国人は心の中では日本が好きなんだ」という解説があふれましたが、ことはそう単純ではないことも、この現象は物語っています。

「本当は日本が好き」という中国人は、ほとんどいないでしょうが、「見直した」とか「意外に良かった」という感想は、帰国時に中国人が抱く感想のなかでも多いものでしょう。もともとのイメージが悪いほど、実際に目にする日本の街のきれいさや日本人の親切さ、そして接客態度の良さには強く感激するとききます。

しかし、「中国人」という主語で語るのであれば、やはりまだ圧倒的多数の中国人が〝反日〟だと言わざるを得ません。そもそも日本に爆買いに来られる人口などしれています。

嫉妬も背景に反日が広がりそうな雰囲気に対して、『人民日報』が一石を投じたというのが、ことの顛末でしょう。

しかし今回起きた〝反日〟騒動は、これまでの反日の動きとはどこか少し違っていたようです。日本や日本に買い物に行く人々を激しく攻撃する書き込みが目立った一方では、日本を攻撃することを批判する書き込みも目立っていたからです。

「爆買いに怒っている者たちよ。君たちの家にある冷蔵庫やテレビ、デジカメ、炊飯器、それ、日本製品じゃないの?」「国内旅行では人込みで圧死。日本で爆買いすれば罵り殺される。ならば休みは家でテレビを観るしかないってこと?」「(国民感情ではなく)市場がすべてを決定するんだよ!」「安くて良い物を買うことと、愛国は無関係なんじゃない?」「外国に旅行に行っているのに、観光もしないで買い物ばっかり。問題はむしろそっちなんじゃないの?」

多様な意見を拾うことができるのです。ここ数年間で、ずい分、冷静な議論になっているのではないでしょうか。少しホッとしました。