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21世紀の国際関係を理解するために必要な視点


2015年6月15日
佐藤丙午


冷戦が終焉して10年以上経過する中で、21世紀の国際関係を規定する構造が明確になってきたように思います。特に、米国が国際秩序形成と維持に利益と関心を失う中で、国際関係がますます分極化し、新たなアクターやダイナミズムが国際関係を規定するようになってきました。

21世紀の国際関係が、20世紀の国際社会と質的に大きく異なる点は、核兵器による人類の消滅の危険を回避することをインセンティブとした、紛争回避の動機及びメカニズムが共有されなくなったことです。米ソの二極構造の下で、核兵器は「冷たい平和」を維持する役割を果たしました。冷戦後に行われた、多極構造の下で一定の国への核兵器拡散が国際社会の安定装置足り得るかという議論は、知的刺激に満ちたものでしたが、現実的ではありませんでした。しかし、21世紀の国際社会が多極構造に向かう中で、大国間の紛争回避及び、国際社会全般の安定化装置は何か、またそこに核兵器はどのような役割を果たすか、現実的に考察する必要があります。

19世紀の欧州の経験を参考にすると、多極構造の国際社会を安定させるためには、国家間関係の合従連衡を柔軟に実施し、秩序を破壊する行為は連携して管理する必要があります。二極構造は、二大国間の利害損失の構図が可視化されるため、本質的に不安定であることを考えると、核兵器による均衡が十分に機能しない二極構造は避ける必要があります。逆に、核兵器国間が二極構造の当事者である場合、戦略的安定性による効果を期待することができるため、各国が核兵器を保有する(もしくは拡大抑止を求めて同盟関係を強化する)インセンティブが高まります。

つまり、21世紀初頭の国際社会は、パワーが分散して多極構造に向かう素地は存在するのですが、その構造の不安定化ゆえに、核兵器を基盤とした二極構造の安定性を求める動きも同時に進行しているのです。二極構造を維持する政治的な動機が希薄なため、米国は中国やロシアを含めた多極構造を志向していますが、米国の安全保障上の保護を求める国は、安全保障の確証を求め、同盟関係の深化を期待します。結果的に大国間の対立構造が出現したとしても、それは小国にとっては必要な関係なのです。つまり、多極構造の下での小国の悲劇の歴史を回顧する時、その安全保障をどのように担保するかという問題が、21世紀の国際社会の最大の問題になっているのです。

国際法や国連が、各国の安全の保証者になることが理想なのでしょうが、その理想が実現するにはまだ道のりが遠いと感じます。その上で、各国は理想と現実の間を彷徨ことを選択せざるを得なくなっているのではないでしょうか。