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防衛装備移転三原則の活用に向けた措置について


2015年1月1日
佐藤丙午


2014年12月18日に、防衛省で「防衛装備・技術移転に係る諸課題に関する検討会」が開催されました。防衛装備移転に関する環境は、大きく変化しつつあります。

政府は2013年12月に国家安全保障戦略を発表し、それに基づいて2014年4月に防衛装備移転三原則を策定、そして2014年6月には防衛生産・技術基盤戦略を策定しました。検討会はこれら一連の流れを受け、防衛省として防衛装備移転に関し「政府の関与と管理の下、円滑に協力を進めるための体制・仕組みについての検討」及び、企業による防衛装備品の海外移転に対する支援策の検討を行うことを目的に開催されたものです。

一般的に、防衛装備品の移転は国家間関係において大きな意味を持ちます。これまで日本は、米国を含め複数の国との間で防衛技術及び防衛装備の移転の取り決めを設けています。14年4月の防衛装備移転三原則が策定された後も、英国、フランス、豪州などと防衛装備協力に関する合意が成立すると共に、インドや東南アジア諸国との防衛装備協力について話し合いを進めています。これまで日本は武器輸出には慎重な姿勢を保ってきました。しかし、今日の国際情勢の下で、武器輸出を含めた防衛装備移転は、安全保障政策を推進する上で避けて通れないものになっているのです。

変化の一例をあげると、まず、主要国の防衛装備品の技術集約性が高まると共に、製造に必要な技術を一国で独占的に保有できなくなりました。この結果、技術を保有する国同士が防衛開発協力を行い、共同生産及び調達を進める必要が生まれました。さらに、防衛装備が汎用技術でまかなえるようになり、より高度な汎用技術を防衛開発・生産に組み込む競争も進んでいます。今日、軍事力の優越性は技術によって決まる部分が多く、各国はそれぞれの管理障壁を戦略的に下げ、必要な技術の入手可能性を高めようとしています。さらに、自国の防衛市場の規模と防衛生産能力のギャップから海外市場を必要とするケースや、移転が安全保障政策上重要な意味を持つケースなども増加しています。

しかし国内には、日本が防衛装備移転を進めることに反対意見も多く見られます。反対論の多くは、1930年代の「死の商人」論のイメージを現代に投射し、「日本の武器で人が殺される」と巧妙に我々の良心に訴えかけてきます。もちろん、武器に係る規範的な問題を無視することは出来ないのですが、たとえば安全のために防衛装備を必要としている国に移転すると、平和と繁栄を維持発展することができます。

つまり必要なのは、防衛装備移転のリスクとコストのバランスのとり方なのです。