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ネガティブキャンペーンのなれの果て


2024年5月
梅田 皓士
 韓国では、2024年4月10日に第22代国会議員選挙が行われましたが、ここでもネガティブキャンペーンが繰り返されました。3月の本コラムで「李在明襲撃事件」を取り上げ、そのはじまりとして2022年3月に行われた大統領選挙でのネガティブキャンペーンが繰り広げられたために、他陣営対する憎悪が拡大したことを指摘しました。しかし、今回の選挙でも蓋を開けてみると、同じことが繰り返されました。
「政権審判」を掲げた野党・共に民主党や祖国革新党は尹錫悦大統領など政府高官を監獄へ送るなどの発言が目立ち、「政権審判」に対抗して「李在明・曺国審判」を掲げた与党・国民の力は、李在明共に民主党代表や曺国祖国革新党代表を「犯罪者」と呼ぶことに終始し、選挙戦で政策的な議論、論戦は大統領選挙の時よりも聞かれませんでした。
 今回の選挙は、尹錫悦政権の中間評価との位置づけが強かったため、野党側の「政権審判」がより有権者に受け入れられ、票がより野党側に流れ、与党・国民の力の敗北との結果でした。特に、与党側が掲げた「李在明・曺国審判」は争点としてほとんど機能しないのが実態でした。そもそも、現在、野党で国家権力を行使できない立場にある李在明や曺国を選挙で審判という構図自体が有権者からは受け入れられなかったのでしょう。
 筆者は、今回の選挙で再び用いられたネガティブキャンペーンという手法は、これまで一定のマナーや暗黙のルールが存在した選挙運動のあり方を変え、法に触れない限りでは何でもありという風潮を作っている気がしてなりません。特に、今回の選挙では、李在明が釜山に応援演説に入った際、共に民主党の候補者と国民の力の候補者と無所属の候補者が同じ地点で選挙カーを使った選挙運動をしていました。通常であれば、党の幹部がマイクを握る時は、他の候補者は遊説等を中止するのがマナーです。しかし、この時は、国民の力の候補者は遊説等を止めましたが、無所属の候補者は李在明の演説が始まった途端にマイクの他、鳴り物を多用し始め、あからさまな演説の妨害を始めました。他にも、共に民主党の看板を持った運動員の前に自身の運動員を立たせ、共に民主党の運動員を見えなくするなどの妨害行為もありました。これまで何回か選挙運動を見てきましたが、これほどの妨害は見たことがありませんでした。他にも、祖国革新党の集会に通行人が早く監獄へ行けなどと叫ぶこともありました。
 この他者への気遣いの欠如やマナーの無視は、ネガティブキャンペーンを繰り返し、他者への憎悪を拡大・再生産を行ってきた、ここ数回の選挙戦略のなれの果てなのではないかと考えたりもしてしまいます。もう一度、韓国の選挙で真っ当な政策論争が見られる日はいつのなるのかと考えたりもしてしまいます。