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李在明共に民主党代表襲撃事件から見た韓国社会


2024年3月
梅田 皓士
 韓国の最大野党・共に民主党代表の李在明が1月2日に釜山を訪問した際、男性に刃物で切りつけられる事件が発生しました。また、1月25日には、裵賢鎮国民の力議員が15歳の少年に後頭部を10回ほど殴られる事件が発生しました。また、2022年には宋永吉共に民主党代表(当時)が大統領選挙の遊説中に鈍器で頭部を殴られる事件もありました。

裵賢鎮の事件については、動機ははっきりしていませんが、李在明の事件の犯人は「李在明が大統領になることを防ぎたかった」と供述しているようです。ここしばらくの間に政治家は襲撃される事件が複数回、発生したわけですが、李在明のこの事件は韓国政治の現状を如実に表している事件と言えます。

 現在の韓国政治は2022年の大統領選挙でのネガティブキャンペーンの尾を引いています。このネガティブキャンペーンの結果、有権者は「誰が良いか」ではなく、「どちらがよりダメか」を基準に投票したと言われています。この結果、政治に対する期待が失われ、不信感が増した状況が韓国社会に作られました。また、ネガティブキャンペーンでは、相手候補への攻撃的な表現も用いられた上に、異なる集団への憎悪を煽るような選挙戦略が用いられました。結果として、この選挙の結果、韓国社会の対立が深化したと言われています。

 実際に、李在明の事件を受けて、心配する声が出ると同時に、この事件は李在明の自作自演なのではないかなどの指摘も出ました。さらに、傷の深さや状況の説明を主治医ではなく、共に民主党の関係者が行ったため、自作自演を叫ぶ声が大きくなり、実際にはたいした怪我ではないなどの声も出ました。他にも、李在明が釜山の病院からソウルの病院にドクターヘリで搬送されたことを受けて、地方の医療レベルを疑い、ソウルの病院に移ったとの指摘も出ました。結果として、李在明は襲撃された上に、一部から批判にさらされる結果となりました。

 韓国では、かつて、朴槿恵元大統領が大統領就任以前の2006年に選挙運動中、顔をカッターで切りつけられる事件がありました。この時は、朴槿恵に同情する声が多く出て、選挙でも朴槿恵への同情票が増えたと言われています。しかし、今回の李在明の事件では、4月に行われる国会議員選挙で同情票につながるとの声は大きくありません。他者を憎むこの状況は、社会の対立が深刻化している現在の韓国社会の実情と言えるのかも知れません。