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西朝鮮と東中国?


2024年2月
荒木 和博
 ジャーナリストの近藤大介さんの著書『ふしぎな中国』(講談社現代新書)は流行語や隠語から現代中国を読み解くというものですが、その一項目に「西朝鮮」という言葉があります。要は中国人が自国を自虐的に表現した言葉だそうで、言われてみると最近の中国には「子分を親分が真似しているのではないか?」と思えることが少なくありません。習近平に対する個人崇拝とか、国民に対する監視の仕方とか…。昨年末金正恩は「統一しない」とか言ってしまったので、習近平も真似して「統一(台湾併合)しない」とか言うのでしょうか。

 この二つの国はお互い嫌いながら離れられないという微妙な関係です。自らを中華帝国の皇帝になぞらえていた毛沢東にとって、「冊封体制」下の国はベトナムなき後北朝鮮しか残っておらず、しかもその北朝鮮はもともとソ連が作った国で、いつソ連の方に行くか分かりませんでした。金日成に対して行った過剰なサービスは軍事合理性とか国際環境がどうかとかいうものではなく個人的な面子が一番だったのではないかと思うのです。

 冷戦が終わってソ連がなくなった後、北朝鮮は今度は米国との接近を目指しました。2000年10月、オルブライト国務長官が平壌を訪問したとき、金正日は下へも置かないもてなしをしました。しかしオルブライトより前に訪朝していた遅浩田国防相を団長とする中国代表団に会ったのは彼女への対応が終わった後でした。

 2000年10月と言えば朝鮮戦争に中国の人民義勇軍が参戦してちょうど半世紀、遅浩田らはその祝賀代表団だったのです。私は正直中国共産党は嫌いですが、あのときは唖然としました。半世紀前中国の参戦がなければ朝鮮民主主義人民共和国という国家は存在していなかったはずで、救ってくれた中国の代表団を放っておいて戦った相手であるアメリカ帝国主義の外務大臣を必死にもてなしていたのですから、「いくら何でもそれはないだろう」というのが率直な感想でした。しかし表向き中国は北朝鮮に制裁を加えたりはしませんでした。そうしたら北朝鮮は間違いなく米国の方に行ってしまうという恐怖感だったのだと思います。

 北朝鮮の対中国での最大のカードは「言うことを聞かないとつぶれてやるぞ」といった開き直りではないかと思います。しかしその北朝鮮にとって中国は生命維持装置のようなもので、切ることはできません。中国は中国で様々な干渉をしてきますから北朝鮮にとっては鬱陶しい。お互い切るに切れない関係が第二次大戦後ずっと続いてきました。

 今北朝鮮には中国の経済が血液の役割をしています。その意味では「東中国」化しているとも言えますし、一方の中国は習近平独裁を続けるために北朝鮮を見習って(?)「西朝鮮」化しているのかもしれません。どちらも長続きしないとは思いますがどうなるのでしょう。朝鮮屋としては目が離せません。