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中露同盟の再結成!?―危機迫るウクライナと台湾危機


2022年2月
川上高司


民主主義同盟がロシアのウクライナ攻勢と中国の台湾攻勢で大きくチャレンジを受けている。

ウクライナはロシアのプーチン大統領にとって欧米の「東方拡大」へ対する地政学上の最後の砦である。一方、台湾は中国の習近平国家主席にとって核心的利益にあたり、米国の「西方拡大」に対する守りであり、ここをとれば太平洋へ自由に出入りが可能となる。

ここに来て、問題は中国とロシアが戦略的協調態勢をとり始めたことにある。アメリカを筆頭とする民主主義同盟国はいかに、この危機を乗り切るのかが問われている。

中露はもともと東側陣営の同盟国であり、戦略的な地政学的類似性も外交手腕も極めて似かよっている。

地政学的な戦略的類似性であるが、ロシアにとりウクライナはソ連時代の領土の一部であり、特に、クリミア半島の港湾都市セバストポリは、黒海から地中海に抜けるロシア黒海艦隊の戦略的に重要な拠点である。冷戦末期にアメリカは「冷戦終結後もNATOの東方拡大はない」と確約している。ウクライナはロシアにとり旧ソ連圏のなかでも経済、人口ともに最大の国家であり、欧米の「東方拡大」に対するいわば最終防衛ラインである。そのウクライナがNATOに加盟しようとしている。

一方、中国の習近平国家主席にとり台湾は米国の「西方拡大」へ対する地政学上の要石である。1972年の米中共同宣言で台湾は中国に帰属することが認められ米軍は台湾から撤退したが、1979年の米台関係法で台湾は実質的に独立を確保している。米国はトランプ政権になってから経済安全保障という名目で台湾をとりにきている。台湾は半導体の最大の生産国であり、ここを米国に押さえられれば中国の目指す「中国製造2025」(中国内の半導体自給率を2025年までに70%に引き上げる)は達成できなくなる。台湾は中国にとっての「核心的利益」にあたる。その台湾に対して米国は国連加盟を呼びかけている。

この積極的リアリズムに基づく民主主義同盟国の行動は、防衛的リアリズムに立つ共産主義同盟国にとっては違う観点に立つわけである。

ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合、バイデン大統領は対抗措置として「軍事介入はとならい」とすでに明言している。その代わりに金融・経済制裁を準備している。14年のクリミア侵攻での対ロ制裁は対応が遅く効果がなかったため、今回は「即座に最大限の制裁措置を講じる」(米政府高官)とされる。

制裁ケースの第一は、ロシアの主要銀行との国際取引を停止するもの。第二は、世界各国の銀行間で資金決済のために必要な「SWIFT コード」からロシア銀行を閉め出す措置で。第三は、ロシアからの石油・ガスの輸入停止である。その他は、ロシア基幹産業向け部品サプライチェーンの遮断やプーチン大統領および側近グループの海外資産の凍結などが考えられる。

いずれのケースにおいても、アメリカの対露制裁措置は、ロシアとの相互依存が深化する欧州や日本などの民主主義諸国がどれだけ足並みを揃えることができるかにかかっている。