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大統領の反乱


2021年1月
川上高司


バイデン新大統領は、米議会を襲撃させたトランプ大統領の処遇に頭を悩ませるであろう。

大統領就任式まで2週間あまりと迫った2月6日、トランプ大統領が扇動し、トランプの支持者が連邦議会議に突入し死者5名を出すという前代未聞の事態が発生した。当時、連邦議会議では11月の大統領選挙で勝利したバイデンの大統領当選を公式に確定させる上下両院合同会議が行われていたが、その最中に、トランプ大統領の支持者たちが議事堂に乱入したのである。会議は中断されて議員たちが避難し、侵入者たちは内部で略奪、破壊行為を行った。この暴動で、警官2人を含む合計5人が死亡。その後もトランプはツイッターで支持者を煽り議会へ再び突入させる可能性があったため、1月9日、ツイッター社はトランプのアカウントを永久停止した。

米連邦議会を襲撃され、議員達はトランプ大統領の弾劾訴追を行う。トランプの任期中に手続きが完了せずとも弾劾裁判で有罪となれば、トランプが2024年大統領選へ出馬できなくなる。

つまり、バイデンを正式に大統領と認めず暴動を起こすトランプ支持者が国民の40%近くいるという事実がある。FBIは内部文書で、トランプ氏が罷免された場合や就任式当日に、各州や連邦などの裁判所に「押し入る」よう呼びかけていると警告している。このようにアメリカでは分断が激化し、内乱状態に突入しかかっている、いやすでに内乱状態かもしれない。

共和党内でも公然とトランプを批判する共和党議員が出ており、トランプ派と、トランプの大統領継続に引導を渡したペンス副大統領の良識派にわかれ始めた。トランプは、上下両院合同会議で副議長のペンス副大統領に結果を覆すよう圧力をかけたが、ペンスは要求を拒否した。そのため、米議会に突入したトランプ支持は「ペンスを絞首刑にしろ」と口々に叫び絞首刑台まで準備した。それを聞いた共和党議員は「クーデターだ」と口々に叫んだ。そして、共和党はトランプ支持とトランプに愛想をつかした議員達に分裂した。

それでも、トランプ支持派の結束は固い。暴動後のロイター通信の調査で、トランプは大統領を辞任すべきとする民主党支持層は88%に対し、共和党支持層は24%しかいない。つまり、共和党支持者の大半はトランプ支持者の連邦議会乱入とそれを扇動したトランプは正しいと支持している。それは、今回の大統領選挙でトランプは7400万票も獲得し、過去最多であったオバマ前大統領(約6800万票)を上回ったことからもわかる。バイデンは8100万票であるそう大差をついていないことかも理解できる。

トランプに扇動されて連邦議会に突入した支持者の主犯格の一人であるチャンスリーは「Qシャーマン」の名で知られる。「Qアノン」は、アメリカは「ディープ・ステート」による支配され、コロナも「ディープ・ステート」が仕組んだトランプ大統領を追い落とすための陰謀だと主張する。Qアノンは、「隠れトランプ」であり、リバタリアン、白人至上主義者、ミリシアなどのグループを勢力圏にいれながら、今や全米中に数十万人はいるといわれる。

アメリカはコロナ渦の大統領選挙の結果、内乱状況に陥りバイデン新大統領がそれを克服できるかが問われている。