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歴史は繰り返す…コロナと金正恩と


2020年5月
荒木和博


20日間姿を隠していた金正恩が5月1日に順川燐肥料工場の竣工式に参席し、健在ぶりをアピールしました。その間死亡説、脳死説、重体説も出ており、1日に出てきた人物が影武者ではないかとの説も取りざたされています。

私には事実を確認できるほどの情報源はありません。どれが正しいのかは分かりませんが、最低限去年の秋以降、一時金正恩の体調が悪化し、権力の長期間にわたる掌握が難しいと判断されたことは間違いないでしょう。

この間の北朝鮮は異例なことずくめでした。まず昨年(2019年)11月末、金正恩からすれば叔父にあたる金平一が大使として赴任していたチェコから平壌に戻りました。金平一は金日成の最後の妻金聖愛の息子であり、金正日は金聖愛を追い落とすことで後継者の地位を獲得し、それを確実なものにするために金聖愛の親族を「脇枝」として隔離し、最も怖かった金平一を東欧の大使として事実上島流ししていました。

その金平一が帰国したというニュースには驚いたのですが、その年の12月には通常1日で終わる労働党中央委員会が4日間、大晦日まで行われ、翌日、つまり2020年の元旦に発表されるはずの金正恩新年辞が発表されませんでした。

さらに1月25日、金正恩の叔母金ギョンヒ(敬姫、あるいは慶喜)が旧正月の記念公演に参加したことが報じられました。金ギョンヒの夫張成沢は金正恩の指示によって銃殺されました。その報告に訪れた金正恩に対して金ギョンヒは拳銃を向けたと言われています。この人は既に死亡したとの説もあり、このとき出てきたのが本物だったのかには疑問も提起されています。

ちょうどその頃から北朝鮮は新型コロナウイルスの感染防止のため国境を封鎖しました。経済制裁の中貴重な収入源だった中国からの観光客を止めたわけですから打撃は並大抵のものではなかったはずです。今でも北朝鮮は公式的には感染者がいないと主張していますが。感染が拡大し、人民軍も一時期軍は活動をほとんど停止していました。すでに相当数が死亡し、隔離されている人は万単位という説もあります。こんな中で北朝鮮最大の祝日である金日成誕生日に出てこなかったのですから、金正恩の身辺に何か起きたと考えられて不思議ではありません。

今の朝鮮半島、特に北朝鮮は1世紀余り前と状況が似てきているように思います。即ち日清戦争・日露戦争はどちらも朝鮮半島をめぐる戦争だったのですが、当の朝鮮半島の人々はどちらにも脇役とすら言えない存在でした。その半世紀後の朝鮮戦争は北朝鮮が初めて韓国が受けた「内戦」だったのですが、米国が参戦し中国が参戦することで国際戦争化し、南北の政府は脇役になりました。

もはや金正恩が本物であるかどうかということに関係なく、米中が北朝鮮内部に介入して勢力争いをしているのではないか、私にはそう見えるのです。歴史は繰り返します。細かい情報を見ているより大きな流れで見た方が良く見えてくるような気がしています。