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中露同盟はあり得るか


2019年12月
名越健郎


ロシアのプーチン大統領は10月3日、ソチでの国際会議で、中露関係についてきかれ、「多面的な戦略パートナーシップが完全であるという点で、同盟関係だ」と述べました。

プーチン氏が中露関係を「同盟」と称したのは初めてで、ロシアでは中露同盟論が浮上しています。国際情勢は「米国対中露」の構図が強まっており、今後中露が同盟に突き進むかが一つの焦点となってきました。

中露両国は2001年に、戦略パートナー関係をうたった善隣友好協力条約を結びましたが、条約の期限は20年で2021年に期限切れとなります。現状では自動延長の可能性が強いものの、同盟に格上げされる可能性もあり、その場合、歴史的、地政学的に日本には最大級の脅威です。かつて、中国とソ連が1950年に結んだ中ソ同盟条約は、日本軍国主義を「中ソ共同の敵」とうたったこともありました。

欧米から孤立するロシア側に中露同盟論が強いようで、ロシアの外交官が中国との同盟に向けて根回ししているとの情報があります。外交官はプーチン発言を忖度して動くでしょう。

かつて、米国の地政学者、故ブレジンスキー元大統領補佐官は、「米国の安全保障にとって最大の脅威は、イデオロギーではなく、不満によって結びつく中露の大連合だ」と述べましたが、この警告が現実化しかねません。

しかし、中国にとって、ロシアとの同盟はメリットがなさそうです。同盟を結ぶと、ロシアが戦うウクライナ、シリアの2つの戦争に自動的に加担し、欧米との関係を決定的に悪化させます。中国経済にとって、米国、日本、欧州連合(EU)との経済関係が生命線です。

ロシア経済の規模は中国の10分の1程度で、資源を買って製品を売る一種の植民地簒奪貿易です。好戦的なロシアと同盟を結べば、中国のソフトパワーを傷つけるという配慮もあるようです。

ただ、中国のソフトパワーも香港問題などで相当凋落しており、双方が条約上の義務を負わない「準同盟」なら十分あり得るかもしれません。それだけでも世界には大きな衝撃で、日露平和条約交渉も最終的に吹き飛ぶでしょう。

欧米のメディアや専門家の間では、中露同盟への警戒論が台頭しており、これを防ぐため、ロシアへの制裁を緩和し、関係改善を図るべきだとの議論も出始めています。それこそ、プーチン大統領の思う壺かもしれません。