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北朝鮮のタブー


2018年10月
荒木和博


金正恩・朝鮮労働党委員長の誕生日は公にされていません。祖父金日成の誕生日は1912(大正元)年4月15日、父金正日の誕生日は1941(昭和16)年2月16日です。ちなみに金正日の生年は公式には1942年になっていますが、これは父親と下一ケタを合わせたことによります。

金正恩の誕生日は1月8日のようですが、誕生年については1982(昭和57)年、83年、84年と諸説があります。誕生日がよく分からない指導者というのは世界中でもあまり聞いたことがありません。

誕生日を表に出せない最大の理由は母親が在日朝鮮人だからです。北朝鮮では在日出身者は差別の対象で、重要な役職に就くことは絶対にできません。金正恩の母親は高容姫と言い(高英姫との説もあり、カタカナで書けばどちらも「ヨンヒ」)大阪鶴橋出身の在日朝鮮人です。踊り子で、北朝鮮に行ったときに金正恩の父金正日が見初めて妻にしました。ちなみに高容姫の前の妻が女優だった成恵琳でその息子が昨年殺された金正男です。
「在日出身で踊り子だった女の息子なのか」という話が北朝鮮の中で伝わればカリスマは全くなくなります。さらに金正恩の祖父にあたる高容姫の父親高ギョンテクは戦前陸軍管理下で軍服を縫製していたと思われる廣田縫工所という軍需工場に勤務していたと言われています。11月号「月刊Hanada」に李英和・関西大教授が寄稿した論文「金正恩最大のタブー『母は在日朝鮮人』」はそのあたりのことを詳しく書いており非常に興味深い内容でした。こうなるととても血筋を公にできるものではありません。

金正恩の誕生日を祝おうとすれば当然「母親は誰だ」ということになります。かくて自分の誕生日すら明らかにできないのです。これまでも何度かストーリーを作って高容姫とその家族を聖家族化しようとの試みがあったようですが、さすがにそれは難しかったのでしょう。

米朝首脳会談とか南北首脳会談とか、もっともらしい顔で臨んでいる金正恩ですが、こんなアンバランスは決してファミリーの問題にとどまらず、国としての矛盾を象徴していると言わざるを得ません。北朝鮮の中は経済もさることながら人口の1パーセントが入れられているという政治犯収容所の存在とか、公開処刑などの人権侵害は何も改善されていません。その矛盾を一所懸命に「仲人口(なこうどぐち)」で取り繕っているのが韓国文在寅政権ですが、遠からずこの矛盾は破綻するでしょう。