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朝鮮半島動向について


2016年11月1日
武貞秀士


今年、北朝鮮は核実験と弾道ミサイル発射を続けており、日本への脅威が増大しています。北朝鮮が国際社会からの制裁を覚悟のうえでミサイル発射を繰りかえし、核開発を続けているのは、なぜでしょうか。

北朝鮮は1948年の建国以来、一貫して「北朝鮮主導の朝鮮半島統一」を目標としてきました。1953年7月の朝鮮戦争休戦後は、対米戦争回避が課題となりました。そして、北朝鮮が行きついたのが核兵器を保有することです。途中で迎撃されることなく、米国の首都を攻撃する能力を持つとき、米国は北朝鮮との相討ちを避けるために、韓国の安全は韓国にまかせる決断をするだろうという計算が北朝鮮の軍事戦略のエッセンスです。

北朝鮮が米国の東部を破壊する能力を持てば、米国は本土の安全を考えて朝鮮半島での警察官の役割を果たすべきかどうかという問題に直面する可能性があります。双方が首都に向けて核兵器を打ち合うのは、米国にとって計算があわない話ですから、米国は大きなジレンマに直面します。もちろん同盟国の日本や韓国は、そのシナリオを望んでいません。

北朝鮮は、2016年、大陸間弾道弾のテポドンとムスダンの実験を集中的に行いました。ムスダンは旧ソ連から導入した潜水艦発射弾道弾を大きくした構造であるため、複雑な構造で技術的な課題を抱えています。ただ移動式で発射前に探知しにくく、米国の戦略爆撃機の基地であるグアム島まで届くミサイルですから、北朝鮮は完成するまで発射実験を続けるでしょう。

ムスダン実験と並行して北朝鮮は究極の核戦力である潜水艦発射弾道弾を強化しています。いよいよ北朝鮮主導の統一を目標とした核戦略があることが明らかになってきました。

このようなとき、突如、韓国で朴槿恵(パク・クネ)大統領への批判が噴出しました。友人の女性実業家、崔順実(チェ・スンシル)氏に機密資料を渡していたことが明らかになり、同氏が大統領府の人事に介入した疑惑や、関係する財団の基金運用に違反行為があったとの疑惑が出てきました。いままで「不通」とよばれ、周囲との意思疎通を嫌う朴槿恵大統領の政策決定過程には批判がありましたが、朴槿恵大統領の背後にひとりの民間人の存在があったこと明らかになったわけです。韓国政治の不安定な状態は続くでしょう。朴槿恵大統領の任期はまだ1年4カ月あるのですが、外交と統一政策で強力なリーダーシップを発揮できなくなりました。北朝鮮の核開発に対処するための国際協力と南北対話が必要な時期なのですが。