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「古い戦争」の終了と「新たな戦争」の始まり


2015年2月1日
川上高司


ブッシュ大統領時代に始まった「テロとの戦争」がようやく終結した。2014年12月31日をもって、アフガニスタンでの米軍の軍事行動が終了した。それに伴いISAFの活動も終了し、アフガニスタンの治安維持はすべてアフガニスタン軍が担うこととなった。

だが、アフガニスタンにとってはこれからが再建の厳しい道が待ち受けているのである。それを象徴するかのように、1月1日、結婚式が予定されていたヘルマンド州の民家にロケット弾が打ち込まれた。新婦の到着を待つ親戚や近所の人々が集まっていた民家に着弾したロケット弾は少なくとも28人の命を奪った。負傷者の数はもっと多い。しかし問題は犠牲者の数ではなく、そのほとんどが女性やこどもだったこと、打ち込んだのがアフガニスタン軍であったことだ。

ヘルマンド州はけしの栽培が盛んでタリバンにとっては重要な資金源となっている。米軍の撤退が進むにつれてタリバンと政府側との衝突は増えつつあった。これからはそのすべてをアフガニスタンの国民自らが背負っていかなくてはならない。アフガニスタンの大統領は国民に対して自国軍への支持と支援を求めたが、軍が国民の信頼を得るには長い時間がかかりそうである。そしてそれはまさにアフガニスタンの再建の道の険しさを物語っている。国際社会はアフガニスタンへの支援を怠ってはいけない。

10年を超えるアフガニスタンへの介入の終了はアメリカにとっては朗報に違いない。一方でシリア内戦で台頭したイスラム国(ISIS)はイラクでも勢力を強め、そう簡単には消滅しない。アメリカはそのISISと闘う新たな戦争へとはじめの一歩を踏み出しつつある。ISIS対策のオバマ大統領のジョン・アレン特使は「数十年かかるだろう」と覚悟を決めている。アレンは、アフガニスタンでも駐留部隊の副司令官を務めたベテランである。

新たな戦争を始めるのはたやすい。だが戦闘は終わっても国の再建にはさらに時間がかかることは古い戦争でアメリカは学んだはずである。古い戦争の終わりと新たな戦争の始まりに立って 2015年を迎えたオバマ大統領は、残りの2年の任期を戦争で費やすのか否か。その分かれ道に立っている。