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APEC北京首脳会議の裏話


2014年12月15日
富坂 聰


日中首脳会談の報道に終始した日本のメディアに比し、国際社会における自国の地位の向上をきっちりアピールした中国メディア。その差は歴然でした。11月上旬に北京・雁栖湖で行われたAPEC報道における、それが正当な評価というべきでしょう。

会議を終えた後、話をした多くの中国人は、「かつて日本は中国にとって独立した一つの大切な国であった。しかし、今回のAPECで日本が〝アジアのなかの一つの国〟でしかないことが明らかになった」と口をそろえ、それが印象的でした。

もっとも北京の共産党や政府の関係者の見解は、それほど短絡的なものではありません。経済的な結びつきなど日本の重要性は十分に理解されているはずです。

ただ、APECの場でも日本に関係することしか報じない日本のメディアの姿勢は、やはり特異な印象を免れませんでした。会議開催前、駐日本中国大使館の報道官が、首脳会談の開催の可否についてのみ興味を示す日本のメディアに対し、「会談をして何をしたいのですか?」と逆に質問する場面があったのも、中国側の本音を表していたのでしょう。

結果、APEC全体の雰囲気は日本のメディアでは伝わらないことが明らかでした。ロシアのプーチン大統領、インドネシアのジョコ大統領との関係の強調。対米外交重視など中国が「日中首脳会談」以上に大きく報じた問題は多く、そこに中国側の意図も表れていました。

APECでは中国が国内問題を反映させた動きを見せていました。それが「キツネ狩り」の問題です。

習近平政権下で進められてきた反腐敗キャンペーンは今夏を境に新たな段階に入りました。反腐敗キャンペーンのスローガンも変化し、従来の「トラもハエも叩く」――つまりどんな大物にも大ナタを振るい、どんな小物も取り逃がさないという意味――から、現在はこう変わってきています。

トラは叩いた。ハエも払った。だが、キツネが残っていることを忘れるな――。

キツネとは、家族を先に海外に移住させ、財産を移した後に、本人が手ぶらで逃げ出す「裸官」、そして政治家に取り入って不当に莫大な利益を得た政商のことです。APECでは、このキツネ狩りのためにオーストラリアと犯罪者引き渡し協定に合意がなったことを最初に大々的に報じることから始めました。そしてキツネの最大の逃亡先であるアメリカやカナダとの間にも口頭ながら合意ができたと強調しました。

習の海外でのキツネ狩りは、今後さらに加速するのでしょう。