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東南アジアで映画を観る


2014年9月1日
吉野文雄


先ごろ『週イチ映画館主義』というエッセイ集を上梓しました。週に1回くらい映画館に足を運ぼうという趣旨です。しかし、さまざまなメディアの発達で、映画館に足を運ぶ人は減りつつあるようです。私が研究対象とする東南アジアでも事情は同じです。

2010年にラオスのプランバナンを訪れた際、閉館した映画館を改装したレストランを見つけました。観光客であふれていましたが、映画館ファンとしては一抹の寂しさを感じました。タイでは、スタンド・アローンとかシングル・スクリーンと呼ばれる映画館は消滅したという情報がネット上にありました。

東南アジア学会の会員で映画を研究されている方から、東南アジアの映画館に関するウエブサイトをご教示いただきましたが、暗い気持ちになるものばかりでした。シネマコンプレックス(シネコン)が悪いというわけではないのですが、個性がなく趣がないことは否めません。

私は、東南アジアに初めて足を踏み入れた1978年以来、あちこちで映画館に足を運びました。

印象的だったのは、タイでは本編上映の前に、プミポン国王の画像を映し出しながら国歌演奏があったことです。観客は起立しました。シンガポールでもたしか同じような儀式がありました。マレーシアはどうだったでしょう。

クアラルンプールで強く印象に残っているのはコリッセウム劇場。ここは経営が変わったけれども、まだがんばっています。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はここで観たと記憶しています。

ブルネイに初めて行ったのは1990年代に入ってからですが、当時首都バンダル・スリ・ブガワンの海岸沿いに劇場があって、「今天」(本日)とか、「五点」(五時)とか、映画のポスターに張り紙がしてありました。カンフー映画やアジア版ホラー映画が中心でした。2010年に行ったら閉館していました。ガドン地区にシネコンができたので、用済みとなったのでしょう。

実は、私が初めてシネコンなるものに入ったのは、インドネシアのバンドンのダゴ地区にできたシネマ21で、1982年3月のことでした。帰国後、日本にもできると思うよと言って知人に触れまわったものでした。

シネコンで観る映画は、タッパーウェア(商標ですが)でうな重を食べるような感じで、どうもしっくりきません。まして、パソコンのディスプレイで映画を観るなんて、カレーライスを箸で食べているような気がします。