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ワールドカップと文明の衝突


2022年12月
野村 明史
カタールで開催されたワールドカップ(W杯)が閉幕しました。 
中東初のW杯の開催に、中東の各メディアの反応は、「東西交流の良いきっかけ」、「ハンチントンが唱えた文明の衝突で生じたアイデンティティの分裂を回復した」、「欧米にイスラーム社会の様子を伝える機会」と肯定的な論調が目立ちました。
 しかしその一方で、イギリスのサポーターが十字軍のコスチュームを着て、カタールのスタジアムに入ろうとするなど物議を醸す場面も見受けられました。
 イングランド元代表のジョン・バーンズは「時代は変わった。ヨーロッパ人が世界に教訓を与え、何が間違いで何が正しいかを教えることは、もはや許容されない」と述べ、彼らの行為は、ドイツサポーターがナチスの制服を着て、ロンドンのウェンブリー・スタジアムに来ることをイギリス人に喜んでもらおうと期待するようなものであると苦言を呈しました。
 また、W杯の開催では、カタールでの性的マイノリティの扱いについても注目が集まりました。
 カタールでは同性愛は法律で禁止されています。カタールのみならず、多くの中東諸国では性的マイノリティに寛容な姿勢をとってはいません。現在、こうした姿勢は、欧米諸国からの批判の対象となっていますが、その理由は、イスラーム教で禁じられているところにあります。
時代の流れは、性的マイノリティへの配慮へと動いていますが、多くの中東諸国側からしてみれば、それは宗教の否定、教義の変更という重い選択肢を迫られることになります。これは、なかなか即断できることではありません。両者の主張は、しばらく平行線を辿っていくことでしょう。
近年、中東諸国は国際イベントの招致に積極的に動いています。2021年には、アラブ首長国連邦で万国博覧会が開かれ、2027年のAFCアジアカップには、サウジが開催に名乗りを上げています。
今後、国際イベントの開催と同時に、中東諸国がこうした人権問題にどのように対応していくか。大きな課題となりそうです。