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DFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)とデータローカライゼーション


2019年7月
佐藤丙午


6月28―29日に大阪で開催されたG20で、米中首脳会談等の華やかな首脳外交の影で、密かに注目を集めていたものに、デジタル経済の問題があります。

G20大阪会議に先立ち、6月8―9日にはつくば市でG20貿易大臣およびデジタル経済大臣会合が開催され、閣僚声明が発表されました。この閣僚声明では、2019年1月に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で安倍首相が表明した流通ルールを作るための交渉枠組みの創設を受ける形で、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の提唱、人間中心の人工知能、そしてガバナンスイノベーションやセキュリティなどで合意が得られました。この中で、G20のプロセスの中では、特にDFFTが注目を集めたのです。

G20大阪会合では、DFFTの重要性が確認されています。データ、情報、アイディアおよび知識の越境流通が、生産性の向上、イノベーションの増大、より良い持続的発展に貢献するのはいうまでもありません。プライバシーや知的財産の保護に一定の条件をつけた上で、その自由流通を促進することが重要とされているのです。欧州理事会も、2018年11月に「EU域内における非個人データの自由な流通のための枠組みに関する規則」を採択しています。

しかし、国際社会にはデータ・ローカリゼーションという、もう一つの動きがあります。商業および軍事上に活用可能なデータ等の情報は、国家およびGAFAのような一部の情報関連企業等の独占するものとなっています。それらに対する自由なアクセスは、デジタル民主主義や、一般商業活動の推進の立場から必要なものと考えられています。一部の企業の独占を排除することは、健全な民主主義のガバナンスの育成には必要とされます。この問題に対して、国連を中心に国際ルールを作ろうとする動きもあります。

同時に、各国の立場からは、自国内でGAFA等が収集したデータに対する権利を守るべきとする主張も出されています。欧州諸国は2018年にEUの「一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)」を発表し、情報の流通に対して一定の制約を課そうとしています。これは、EU域内の個人のプライバシーの保護を目的としたもので、EU域内で取得した「個人データ」を「処理」し、第三国に移転することに規制をかけるものです。

データ問題では、プライバシー、自国内の産業保護、安全保障、法執行/犯罪捜査を理由として、保護措置や規制措置が必要であるとの意見は根強く存在します。しかし、データの自由流通には大きな可能性があるのも事実です。この二つの立場をどのように調和するか、今後の国際社会の議論が待たれるところです。