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トランプ大統領のアジア歴訪


2017年11月15日
川上高司


トランプ大統領はアジアを10日間にわたり歴訪しました。アメリカの大統領がこれほど長期にわたりアジア各国を訪れるのは1991年末から1992年初めにかけてのジョージ・H・W・ブッシュ大統領による歴訪以来であした。トランプはハワイに立ち寄った後、日本(11/5-7)を皮切りに韓国(11/7-8)、中国(11/8-10)、ベトナム(11/1--12)、フィリピン(11/12-13) とアジアを回りました。

長期間にわたる米大統領のアジア歴訪だっただけに注目されました、そこでのメッセージは一貫して北朝鮮および中国に関するものでした。そのキーワードを拾ってみるならば、日本では朝鮮半島と中国を踏まえた「同盟の確認」、韓国では北朝鮮に対する強硬な「宣言」、中国では二国間の経済と北朝鮮問題をめぐる「交渉」、フィリピンとベトナムでは中国との「仲裁者」、ベトナムでは自由で開かれた「インド太平洋」と言えましょう。

トランプ政権下では「経済ナショナリズム」とも呼ばれるアメリカン・ファースト(米国第一主義)が闊歩していて、今回のトランプ大統領のアジア歴訪でもそれが全面に押し出されました。

トランプ大統領のアジア歴訪は北朝鮮包囲網を築くことを建前上の目的としながらも、その脅威に対抗するために日本と韓国には米国製の武器購入を確約させました。トランプ大統領のアジア歴訪の中でも最大の焦点はいうまでもなく中国であり、いかに「取引(ディール)」を行うかにあった。そして中国と取引を行うにあたっての「手段」として北朝鮮がありました。

さらに、トランプ大統領はアジア歴訪にあわせて米空母を3隻投入しました。空母3隻を朝鮮半島付近に派遣することは朝鮮戦争以来のことで軍事的には正に戦争前夜でした。これは、ローズベルト大統領が得意とした「棍棒外交」(棍棒を持って静かに話す)を展開したことになります。棍棒は3隻の空母であり北朝鮮に向かって振り上げましたが、話した相手は中国でした。

その結果、トランプ大統領は中国から2500億ドル(約28兆円)の商談を得、そして北朝鮮問題で中国との調整を行ったと考えられます。また、今回の米中取引の後、トランプ大統領はベトナムとフィリピンでは南シナ海における米国の関与に関しては極めて消極的であったことから、トランプ大統領は南シナ海問題についても中国と取引をした可能性があります。このように米中が取引を行った結果、中国のアジアにおける影響力が増すとすれならば日本は益々難しい舵取りを迫られることになるでしょう。